裸でも生きる 25歳女性起業家の号泣戦記 を読んだ
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※※※私はバングラデシュ在住経験もあるが、これから書く自分の感想が必ずしも正しいとは全く思ってない。一個人の感想と流していただければありがたい。※※※
10月末に出産、他に子供も2人いるし、時間のあるときは、普段はパソコンに向かいたいので読書も最近はなかなかできない。
年末年始に福島に帰省するのにインターネット環境がないので、ここぞとばかり読書しようと本を何冊か持ち帰った。
その中の一つに、「裸でも生きる」がある。
これはバングラデシュの特産品であるジュートを使ってバッグ製作販売会社マザーハウス(http://www.mother-house.jp)を立ち上げた山口絵理子氏のエッセイである。
帰省期間は10日ほどあったが、結局読み始めることができたのは佐渡に戻る3日前。
赤ちゃんを抱っこしながらこの本を開いていたらバングラデシュ人のだんなが聞いてきた。
「それ、何の本?」
私が「前にサイトのページ見せたことあったよね?ジュートでカバン作った人」と言うと、しばらくしてだんなはこういった。
「彼女は偉大な仕事をしたわけだな?バングラデシュ人はこういうだろう。彼女は結局バングラデシュを利用して自分が金持ちになっただけだ。バングラデシュのためになんかなってない」
バングラデシュ人の印象としては妥当であろう。
本の内容を読みもしないで物を言うところなんか。
私はいい返した。
「私はこの人がすごい人だとかバングラ発展のためにやってるとかなんて一言もいってないけど?」
確かに、マザーハウスのバッグは、バングラデシュで作られた割には、高価なものだと思う。
ネットでざっと検索したら、工場の人の賃金は現地の縫製工場の1.5ー2倍程度。
縫製工場の工員なんて搾取対象の代名詞だから二倍といってもたいしてよい賃金とは思えない。
だからといって山口氏が結局ほかの外国人たちと同じようにバングラデシュ人をこき使って利益を上げていると思っているわけではない。
国内で展開されている店舗数と現地工場での制作数を考えてざっと計算するとやはり、生産元に還元するというよりは、日本国内の流通のために経費を割かざるを得ないだろうと思う。
それでは何がバングラデシュのためになるのか?というか、山口氏がなぜバングラデシュにこだわったのか?
簡単なストーリーを述べるとこうだ。
工業高校から必死に勉強して有名私立大学に入り、開発援助の勉強をしている中、米州開発銀行で臨時に働くチャンスをつかんだ。
そこのスタッフは皆、貧困とは無縁で、開発対象の国にも行ったことがない。
そういう現状に疑問を持ち、「アジア 最貧国」という検索結果で得たバングラデシュに程なく降り立つ。
それがきっかけで、バングラデシュの大学院に進み、バングラデシュのジュートでバッグを作るようになる・・・。
ここで、一つの疑問が出てくる。
山口氏が臨時雇用された米州開発銀行は主にラテンアメリカの国への援助をしていた。
環境的にラテンアメリカの最貧国を探してもよかったように思うが、なぜ「アジア 最貧国」としたか?
本の中には理由は書いてない。
やはり山口氏がアジア人だからなのであろうか?
これも出会いであり、山口氏の運がひきよせたものかもしれない。
山口氏が着地したのがこラテンアメリカとかアフリカだったらこうは行かなかったのかもしれない。
バングラデシュには、錬金術さながら、金に化け得る素材と技術の土台があったから、かもしれない。(あくまでも筆者の勝手な憶測なので事実は定かではありません・・・)
今でこそバングラデシュは最貧国の一つとしてイメージされてるかもしれないが、かつてはインドの一部として「黄金のベンガル」と評された地域。
当時は、ジュートが金と同じ値段で取引され、ジュートは「黄金の糸」とも評されていた。
もう一つの、技術という観点では、バングラデシュにはイギリス統治国家時代、ダッカモスリンという幻の織物があった。
イギリス人が自国製品が売れなくなるのを恐れて、職人たちの手を切断したというぐらいだから余程のものだったのだろう。
私は博物館で展示してあるものを一度見ただけなのでよくはわからないが。
この2つがあったからこそ、「最貧国」バングラデシュでも立派に世界に通用するシロモノが誕生したのかもしれない。
こう考えると日本もかつて「黄金の国ジパング」と呼ばれたし、国旗も日本のものと似ているし、バングラデシュは、何か日本と因縁がある国なのかもれない。
いろいろ書いてしまったが、この本の感想を述べるとこうである。
山口氏は、あちこちでインタビュー記事などを拝見するし、受賞もある。
本も何冊が出版されているので、確かに成功者の部類に入る方だろう。
普通成功者の体験記などを読むと「ああ、こういうのっていいなぁ。私もこういう成功したい。うらやましい」と思うだろう。
ところがこの本を読んだ後、私が思ったのはこうである。
「うわー。こんな疲れる人生は絶対真似したくない」
山口氏や関係者の方にしたら失礼な感想かもしれないが、そのぐらい壮絶な努力の上に成功がある、そんな生き方をされてきた。
というか、あることを思いついてから、必ず実行に移すし、それを行動に移すまでの期間が短すぎるし、それを間違った選択とは思わずに突き進むのだ。
「普通、もうちょっと先を見たり、他のことを探したり、考えてから行動するよね」というようなことを山口氏は即座に決定、実行する
柔道が強くなりたいからという理由(だったかどうかははっきりと覚えてないが)で、女子柔道部ではなく男子柔道部に入部して肉体的にも大変なトレーニングを自分に課す。
工業高校からやっとの思いで有名私立大学に入学したものの、周囲の人との英語の実力に差がありすぎるのでカナダに留学、ステイ先で毎日勉強しすぎて救急車・・・
ある程度、バッグを作り、販売経験をした後、自分自身で鞄作りの勉強をすることを決意。
大体、女性一人で知り合いもいない貧しい外国でアパートを借りようなんて誰が思うだろうか?
結果だけを見てうらやんだり、ねたむ人も多いだろうが、山口氏に関してはこういう壮絶な体験を経てつかんだ結果だから、素直に拍手を送りたくなる。
この本に書いてある彼女の行動で見習いたいと思ったことは、ある程度のところまでいった時点で、カバン作りの学校で一から学んだところ。
なかなかできることではない。
某大手インターネット書店の感想などを見ると、高評価が多い。
確かにバングラデシュで騙されながらも立ち上がって、成功を収める過程は感動的である。
こちらの記事(http://www.e-jaban.com/blog/2011/02/post-43.html)でも紹介した「この日本人がすごいらしい」のビデオで語られていた「バングラデシュ人は1回言ってもわかんなくって10回言って・・・」のくだりなんて、よくわかるので思わず涙してしまったくらいだ。
思い立ったが吉日、と、私も行動して自分のやりたいことを成就させないと、と思った2012年の一日だった。
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